ハロゲン化アルキルとアルコキシドイオンからエーテルが生成するSN2反応は、
Williamsonエーテル合成 と呼ばれます。
といっても、どんなハロゲン化アルキル、アルコキシドイオンの組み合わせでもエーテルが合成できるわけでもないので、反応においての制約を解説します。
反応について
アルコキシドイオン源について
Williamsonエーテル反応には、アルコキシドイオンを必要としますが、このアルコキシドイオンは、
アルコールと水素化ナトリウムから、
ROH + NaH → RO– + Na+ +H2
のようにして生成することができます。
水素化ナトリウムNaHは非常に強力な塩基であり、OH基、NH基、SH基からプロトンを引き抜くのに用いられます。
ちなみに、水素化ナトリウムは強塩基であり、空気中の水分とも反応するので、油中に保存されていて、使うときはヘキサンなどで洗い流して使います。
第三級ハロゲン化アルキルは用いることができない
例えば、エトキシドイオンと臭化tert-ブチルを用いた場合を考えて見ましょう。
この場合、tert-ブチルエチルエーテルができるのではなく、2-メチルプロペンが生成しています(つまり、ハロゲン化アルキルからの脱離反応が起こった)。
これは、SN2/E2反応の競合を思い出してみると分かります。
SN2反応における、ハロゲン化アルキルの違いによる反応性は、立体障害が理由で
第一級 > 第二級 > 第三級
でした。
一方でE2反応では、より安定である多置換のアルケンを生成するために、反応性は
第一級 < 第二級 < 第三級
となっています。
したがって、第三級ハロゲン化アルキルを用いた場合は、E2反応しか進行しないのです。
では、tert-ブチルエチルエーテルを得るにはどうすればよいでしょうか。
…その答えは、アルコキシドイオン側にかさ高い基を用意しておくということです。
上の反応のように、臭化エチルとtert-ブトキシドイオンを反応させれば、 tert-ブチルエチルエーテルが得られます。
しかし、第一級ハロゲン化アルキルの場合、SN2/E2反応の競合が起こります。ここでは、かさ高い求核剤/塩基(tert-ブトキシドイオン)を用いているので、E2反応が優先し、エテンが多く生成してしまうことに注意しましょう。
まとめ
- Williamsonエーテル合成とは、ハロゲン化アルキルとアルコキシドイオンからエーテルが生成するSN2反応である。
- アルコール+水素化ナトリウム→アルコキシドイオン
- 第三級ハロゲン化アルキルは用いることができない。
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